バンクーバーからカーリングを見始めた三十路男が、だんだんわかってきたこと。(前半戦)

カーリングってあれでしょ、石投げてブラシで掃いて、的に入れたら勝ちってやつでしょ。『氷上のチェス』だっけ?なんか難しそうだよねー」
そう思っていた時期が、僕にもありました。
そんな僕が、このバンクーバーからはもうカーリングにどハマりですよ。だって、ものは試しと実際に試合を見てみたら、3時間近くもテレビに釘付けになってしまうような、熱く激しい戦いなんだよ!あんなの見せられたら、絶対ハマるって!


これはもう、是非とも一度、ダイジェストじゃなく全部見てみていただきたい。
確かにゲームは複雑だけど、ルールは単純。複雑そうに見えるのは、ルールが単純であるがゆえに、戦略戦術が多様だからなんです。
一見、的にまったく関係ないところに投げられた石にも、大切な意味があったりする。「ここは点を取らせたいですね」みたいな、普通にスポーツを見てたらちょっと考えられないような言葉も出てくるけど、これにもちゃんと理由があるんです。
それがわかり始めると、きっと、カーリングの面白さがわかってもらえるんだと思います。


観戦歴まだ6試合(つまりはこのバンクーバーだけ)の自分が偉そうなことを言うのは馬鹿で生意気で身の程知らずですが、それでも、そんな自分だからこそ
「これがわかったらカーリングが面白くなった!」
というところを書いてみようと思います。


日本チームは残り3試合(2/23午前0時現在)だけど、決勝に進出したら…メダルに絡んだら…まだまだ試合はあります。
もちろん、オリンピックが終わっても大会はあります。
さらには、4年後にはまたオリンピックがやってきます。
そういうこれからの日本の活躍を、みなさんと一緒に楽しく応援できたら幸いです。
自分なんかが余計なことをしなくても、日本には素晴らしい解説者であり競技紹介者である小林宏さん(オリンピックの解説者です)がいらっしゃいますが、この文章が少しでも何かの力になればいいな、と思います。


なお、この文章は、小林さんの解説、Wikipediaの記事(笑)と、あとは「Twitter」のみなさんの声より成り立っています。ありがとうございます。
ちなみに、自分のアカウントは、「@pon1225」です。カーリングの試合中は、よく「#gorin」のハッシュタグで実況に参加してます。脱線ばかりですが、よかったら生暖かく見守ってください(苦笑)。


さて。


まずは「見た目」から紹介しますか。
カーリングの試合場(シート、と呼ぶようです)は、長さ約40mです。石を投げる足場の40m向こうに、緑と青の的があります。これが「ハウス」といって、ゲームの一区切り(エンド、と言います)が終わるごとに、このハウスの中にある石の数が点数になります。
石の数え方には、もちろんちゃんとしたルールがあります。ここがまず最初にわからなくなるところだと思うので、最初に説明しちゃいますね。


便宜上、「+」がハウスの中心、「○」が自チームの石、「●」が相手の石とします。
で、ハウス内には5個の石が入っている状況を思い浮かべてください。

まず、ハウス内の5個の石が全て自チームの石の場合。
+○○○○○
これは5点です。

次に、いちばん外の石が相手のものだったとき。
+○○○○●
これは4点です。

では、自チームの石の間に相手の石があった場合…
+○○●○○
これは2点になります。「ハウスの中心にいちばん近い石から、相手の石より内側にある自チームの石の数」が、ひとつのエンドでの獲得点数になるわけです。

つまり、
+○○○●●
この場合は3点です。

逆に、ハウスの中心にいちばん近い石が相手のものだった場合…
+●○○○○
これは、相手に1点が入ります。

得点は、ハウスの中心にいちばん近い石(ナンバーワンストーン)のチームにしか入りません。
+○○●○●
これは自チームに2点、相手は0点。
カーリングでは、常にどちらかのチームにしか点数が入らない(あるいは両チームとも0点)、ということになります。

ハウスの中にどれだけ相手の石があろうと、ナンバーワンストーンを確保したチームだけが得点を確保できる。それがカーリングの得点システムです。


さきほど「エンド」という単位に触れました。カーリングは、全部で10エンドで競います。ひとつのエンドでは、各チーム8個ずつの石を交互に投げていきます。
カーリングは1チーム(原則として)4人で、順番に投げていきます。順番はゲーム開始前に申告し、ゲーム中は変更できません。順番ごとに、一番め「リード」二番め「セカンド」三番め「サード」四番め「スキップ」という呼び方をします。
相手チームと交互に投げるので、先攻リード1→後攻リード1→先攻リード2→後攻リード2→先攻セカンド1→後攻セカンド1→…と投げていくことになります。後攻のスキップが2投目を投げ終わったらエンド終了です。全部で16個の石が投げられることになります。得点を計算し、また最初から次のエンドを開始します。
このようにして第10エンドが終わったら、各エンドの得点の合計で勝敗を決めます。同点の場合は延長戦、エクストララウンドに入ります。延長戦でもルールは変わりません。


さて、「先攻」と「後攻」について。
カーリングの得点システムでは、「ハウスの中心にいちばん近い石=ナンバーワンストーンのチームにしか点数が入らない」というルールは説明しました。
と、いうことは。
このゲーム、後攻が圧倒的に有利だということがわかるでしょうか。最後に、相手の石を弾き飛ばしてでもナンバーワンストーンを確保すればいいわけですから。
ゲームの先攻後攻は、最初こそコイントスなどで決めますが、それ以降(第2エンド以降)は、
「前のラウンドで点数を獲得したチームが、次のエンドでは(不利な)先攻になる」
地味ですが、このルールが、もしかしたらカーリングのもっともコクのあるルールかもしれません。
後でもうちょっと書きますが、簡単に言うと、
「場合によっては、相手にわざと点を取らせてでも、次のエンドで後攻をとったほうが有利になることもある」
という局面が、実にしばしば現れます!まあ詳しくは後ほど。
ここでは、「前のエンドで点数をとったほうが次の先攻」ということを覚えておいてください。
また、最後にどちらの石もハウスに残っていない=引き分けのときは、先攻後攻はそのままです。


試合場、メンバー構成、ゲームの進行、点数の計算…を、ザッとですが紹介してきました。いったんまとめましょう。

  • 試合場は約40mの長さ
  • メンバーは、リード、セカンド、サード、スキップの4人。
  • 交互に石を投げ、各チーム8個ずつ投げ終わったらひとつのエンドが終了。
  • ゲームは第10エンドまで行われ、最終的により多く得点したほうが勝利。
  • 得点は、各エンドの終了時、ハウスの中心にいちばん近い石のチームが、ハウス内の相手チームの石より内側にある石の数だけ獲得する。

ルールは単純ですよねー。


あとは、ゲームに使われる道具や、観戦してて誰もが気になるところを、わかるかぎり紹介していこうと思います。


まずはなんといっても「石」。そのまんま「石」とか「ストーン」と呼ばれます。花崗岩という石でできていて、重さは20kgだそうです。これは、選手が試合のたびごとに持ち歩くわけではなく、試合が開催される会場に備え付けのものを使うということです。…そりゃまあ、1チーム8個の石を使うわけだから、合計160kgになっちゃいますもんね(笑)。
そして、たぶん誰もがカーリングの印象として持ってるであろう「ブラシ」。これでリンクの表面を掃く(スウィープする、スウィーピング)わけですが、あれは何をしてるのかというと、掃くことでリンク表面の氷を溶かし、石をよく滑るようにしているんです。


カーリングの石は、実はただ投げるのではなく、ゆるやかに回転(カール)させながら投げています。だから「カーリング」なんですね。で、なんでそんなことをするかというと、回転をかけずにまっすぐ投げると、かえってショットが安定しないからなんだそうです。ゆるく回転させることで、石は(回転の影響によって曲がっていくぶんも含めて)シューターの狙ったところに進んでいきます。シューターは、その曲がり具合も計算して石を投げてるんです。
が、40mも向こうから20kgの石を投げるわけで、狙ったところから微妙にズレてしまうこともあります。そんなときがブラシの出番です。
「スウィープすると、石は本来曲がり始めるところよりまっすぐ進みます」。
…さらっと大事なことを書いてしまった(笑)。
要するに、投げたストーンが、狙ったところより手前で曲がってしまいそうだ…と判断すると、スウィープが始まります。すると、石はそのぶんまっすぐ進んでから曲がり始めます。そうすることで、ショットのズレを修正して、狙いどおりの位置に石を運べるようになるわけですね。
あのゴシゴシしてるのには、こういう理由があったんです。


そして、試合を見ていると気になるのが「声」。みんな、なにやら叫びながらプレイしています。その意味を下にまとめます。

ウォー:掃くな
ヤップ:掃け
ハリー:すっごく掃け
クリーン:(ゴミを取るくらいに)軽く掃け

だいたいこんなところです。これは共通の用語らしいんですが、国によっては自国語で声を出すこともあるようですし、他にも「ハード(ヤップより強く、ハリーよりは弱めの意味で)強く掃け」とかいろいろあるみたいですが、自分もこれくらいしか把握してないので…(苦笑)もっと知りたい方は調べてみてください。とりあえず、ここに挙げたぶんだけでも観戦には差し支えないかと思います。


あと、声としては、日本チームの場合は日本語で「5から6」とか「9あるよ」とか言うこともあります。これは、ハウスの中心を「7」として、石が止まりそうな位置を数字で表してるんだそうですが、実は僕もまだよくわかってません(苦笑)。中心より手前の場合は数字が小さく、奥に行くに従って数字が大きくなっていきます。
「5から6」という場合はハウスの手前のほう、「9あるよ」と声が上がれば、かなり奥まで石が進みそうだ、という意味ですね。


そうそう、これらの声がけは、メンバーによって優先順位があります。「スキップ(通常4番めに投げる選手)」が司令塔として、順位が高くなります。「キャプテン」という感覚に近いかもしれません。
なので、スキップの選手は、1〜3番めの選手が投げている間は、ハウスの向こうで石のコースを確認しています。そのスキップに対し、スウィープする選手(スウィーパー)が例えば「5!」と到達予想を告げ、それを聞いたスキップが「もっとハウスの中に石を運びたい」と判断すれば「ヤップ!」、石のラインが狙いどおりになれば「ウォー!」と指示を出すのです。
スキップが投げる場合は、スキップに準ずる選手(たいていはサードらしい)が代わりに指示を出します。このスキップ代理(準スキップ)の選手を「バイス」というのですが、あまり中継では聞いたことないような…。


道具のラストは「靴」。
この靴はカーリング専用の靴で、「利き腕(石を投げるほう)と反対の足の裏」が、よく滑るように加工されています。だから、ショット時にあんなふうにツーッと綺麗なフォームで滑れるんですね。ショット時以外は、危ないので滑り止めとしてゴム製のカバーをかけています。
なお、日本にはまだいくつかしかないらしいですが、一般にも開放されているカーリング場では、逆に普通の靴につけて滑りをよくするためのカバーを貸し出ししてたりするとのこと。


前半はこのへんで。後半は、より生意気に、ちょっと踏み込んだ話なんかもしちゃおうと思ってます。。。
では、筆者これより「おやつタイム」。