バンクーバーからカーリングを見始めた三十路男が、だんだんわかってきたこと。(後半戦)

「おやつタイム」には、だいたいバナナとか食べてるみたいですね…


っと、いきなり何のことか、という話ですよね。あの、カーリングのハーフタイム(第5エンドと第6エンドの間)のことを、通称「おやつタイム」ってみんな呼んでるんです。
前半で思いっきり説明をすっ飛ばしましたが、カーリングの試合は、始まってから終わるまでに2時間半くらいかかるんです。というのも、各チームには「持ち時間」というのがあり、これがなんと「73分間」!合計すると…146分。単純計算で、2時間26分。長いですよね…。
なので、上述のハーフタイム(ちなみに7分間)に、選手たちは果物とかを食べて疲労回復・栄養補給をするんです。
で、それが通称「おやつタイム」。
ゲームの本質には一切関係ないんですが、実況やってるとよく出てくる言葉なので、参考までに。うん、ついでに時間制限のことも説明できたからよしとしてください(笑)。
ちなみにこの時間制限…もし73分の持ち時間中に第10エンドの最後のショットができない場合、そのチームは失格になる、という厳しさだそうです。
なお、この持ち時間の他に、各チーム2回ずつ1分間の「タイムアウト」を取ることができます。これもちょっと変わってて、タイムアウトを宣言してから1分間、というわけではなく、離れたところにいる「監督がシートに到着してから1分間」とのこと。


…あ、念のため書いとくと、この文中で「実況」と言ってるのは、テレビとかのいわゆる「実況解説」のことじゃありません。僕はアナウンサーでもなんでもないです(笑)。
ここで言ってる「実況」は、インターネットの「Twitter」上で、リアルタイムで試合中継を見ながらみんなで書き込みすることです。
このカーリングという競技を理解するのに、Twitter実況は本当にすごく参考になりました。みなさん詳しいので、おかげさまで難しい局面もわかったような気分になれます(笑)。
Twitter実況がなかったら、こんな文章書けてないですよ。ほんと…。


さぁて…。


ここから先は、今までよりさらに私見だらけになります。確証が持てないこと、もしかしたら、ちゃんとカーリングを知ってる方からすれば間違いだらけなことも書いてしまうかもしれません。
なんでそんなことをド素人のお前が書くんだ、と言われたら反論はできないんですが…

なんて言うか、カーリングって、ルールは本当に単純です。まあ細かいところはもちろんそれなりに細かいみたいですが、見ていくうえで押さえとかなきゃいけないルールは、前半に書いたことくらいです(あえて断言しちゃいます)。
なのに、初見の人がどうしても「よくわからん!」となってしまうのは、「結局、何がしたいのかよくわからない」ということに尽きるんじゃないかと思います。
点を取るにはハウスに石を入れなきゃいけないのに、1投目から変なところに石を置いてみたり、後攻のチームが相手のナンバーワンストーンを叩き出せば得点できるのにわざと相手に点を取らせたり…
一見不利に見えるようなことを、両チームともバンバンやってきます。これが、カーリングをわかりづらくさせているんだと思うんです。
でも、見ているうちに、その「無駄」にしか見えない一手が、実はすごく大事な、勝利への鍵になってることが、ちょっとずつわかるようになってきました。


なので、「ミスショット」を覚悟のうえで、そういう自分なりに気づいたことを書いてみようと思います。
重ね重ねおことわりしておきますが、以下の文章は素人の勝手な解釈です。間違ってたらごめんなさい。そんなに的外れにはならないと思うんですが…もしここに書いたことでおかしなことがあったとしても、それは僕の責任です。でも、そのことについてはこうしてしつこくあらかじめ宣言しておりますので(苦笑)、大目に見ていただけると嬉しいです。
あ、「そこはそうじゃないよ、こうだよ」とのご指摘、ご指導ご鞭撻はむしろ大歓迎です。というよりそのほうが助かります(笑)。


以上、よろしくお願いいたします。


…では、始めます。


カーリングというのは、大ざっぱに言えば「後攻が1点取ることで進んでいくゲーム」なんじゃないか、と思っています。何故なら、それくらい「後攻が有利」だと思うからです。前半で書いたのはこのことです。
単純に言って、先攻が1投目をハウスに入れる、後攻がその石を出す、先攻がまた入れる、それを後攻が出す…としていけば、後攻の最後の一投で、後攻の石がひとつハウスの中に残る。後攻が1点獲得です。
あるいはもっと簡単に考えれば、先攻の石がいくらハウスの中に入ってようが、後攻が最後のストーンをハウスの中心に投げ込んでナンバーワンを確保すれば、そのエンドは後攻の得点になります。

「後攻が1点取って当たり前」

それが、自分がカーリングを見るうえでの基本的な認識です。


でも、それじゃ勝負はつかないですよね。1点取った後攻は次のエンドで先攻になるから、今度は1点取られることになる。これを繰り返すと、第10エンドが終わって5‐5。延長を考えなければ、引き分けです。
つまり、この均衡をいかに崩すか、がカーリングにおける「勝負」になってくる、と思って自分は見ています。
さあ、では、そのためにはどうするか。

  • 自分たちが先攻のときにも得点する
  • 自分たちが後攻のときに2点以上を獲得する

こうすれば、均衡は崩れます。
でも、カーリングは交互にショットするので、石どうしを1対1で交換していたら、上のような状況は作れません。ではどうするか…


ここで意味を持ってくるのが、上述した「一見無駄な石」。ハウスの外にぽつんと置かれた、得点に絡まなさそうな石。
これが「ガードストーン」です。ガードストーン(あるいは単にガード)の役割は、文字通り他の石を「守る」こと。
ハウス上に単独で、丸裸で置かれた石は、次の相手の番に簡単に外に出されてしまいます。それを防ぐため、「相手がその石を出そうとするコースを、手前で防ぐ石」。つまり通せんぼをするわけですね。
まずガードの石を置き、相手の様子を見ながらそのガードの後ろに自分たちの石を隠して、得点を狙う。これが、先攻がよく使う、「先攻で得点する」パターンのひとつのようです。
もちろん、ガードを利用するのは先攻だけじゃないし、プレイが進むにつれて状況はどんどん複雑になってきます。
そういうとき、状況を理解する手がかりになるのは、
「それぞれの石がどういう関係になっているか」
ということです。このチームにとってはあの石が邪魔、だけどその石をどかそうとしても、その手前にガードが効いている…なんてことが見えたときの楽しさは、ちょっとやみつきになります(笑)。
「なんだかゴチャゴチャしててよくわかんないな」
そんなときは、どの石が盤上で何をしているのか、そんなふうに考えてみるのがいいと思います。


ただし、ゲームも後半から終盤になってくると、もっとややこしくなってきます。
カーリングのスコアは、「いくつのエンドを取ったか」ではなく、「合計で何点獲得したか」で競います。第10エンドが終わったときに、相手より1点でも多く得点していればいいわけです。
というわけで、次のような状況を考えてみます。

ここまでのスコアは10‐9で、チームAがリードしての第9エンド。
チームAは先攻。残りのショットは各チーム1投ずつ。
現在、ハウス内外にはひとつも石は残っていない。

これは、チームAにとって、かなり有利な状況になります。それは、ただ1点リードしているからというだけではありません。どういうことかというと…

  • チームAがハウスに石を入れる。
  • チームBがその石を出して1点獲得。スコアは10‐10で第10エンドへ。

こうなれば、Aは第10エンドを後攻で迎えることになります。スコアは同点。ここで思い出してください。「後攻が1点を取る」のは、かなり簡単なことです。
では、別の流れを考えてみます。

  • Aがハウスに石を入れる
  • Bがその石を取りこぼす。スコアは11‐9、Aが2点リードで第10エンドへ。

この場合、Aは投球順的には不利な先攻となりますが、点差は2点に開きます。Bの攻撃を抑えて、1点止まりにすることは、それほど難しいことではありません。
つまり、この段階にまで来れば、第9エンドの結果がどうなろうと、Aはかなり有利な状況で第10エンドを迎えられるのです。こういう終盤の駆け引きは、第7か遅くとも第8エンドくらいではっきりしてきます。それまでに点差が開いていればなおさらです。
必ずしも「そのエンドで少しでも点を取っておく」というのが有利とは限らない、ということが、わかってもらえると思います。


うーん、結局たいしたことは書けませんでした。
でも、カーリング観戦の、何かの手がかりになれば幸いです。




最後に。


この文章を書くにあたって、「敵」という表現は使いませんでした。これは、カーリングという競技において、「敵」という考え方がないからです。
あとひとつ、「審判」について、何も説明していません。


この2つは、カーリングが「フェアプレー精神」で行われている、ということに、自分なりに敬意を表したかったからです。
カーリングは、相手チームを打ちのめして敗北させるために戦うのではなく、正々堂々と互いの技術を競い合い、優れた技量を示すために戦うものだそうです。
そのため、他の多くの競技と違い、審判という存在は非常にささやかなものになっています。カーリングの試合中に審判を見ることがあるとすれば、エンド終了時にそれぞれのストーンの距離が肉眼ではどうしても確認できなくて、距離の測定員として要請されたときくらいだと言われます。
なんだか道徳的すぎて、こういうことを書くのは照れくさくはあるんですけど、こうやってカーリングという競技を紹介していく中で、どうしてもお伝えしたかったことではあるんです。


なお、これについては、こちらもぜひお読みください。とてもいい文章だと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/カーリング精神


いやー、長々と失礼しました。こんなもん、Wikipedia見たら全部書いてあることなんですけどね(苦笑)。
あ、そうだ。ついでにこれも、Wikipediaの受け売りですが。
カーリングの試合開始前、場内にはバグパイプの音色が流れます。これは、カーリング発祥の地であるスコットランドの民謡「勇敢なるスコットランド」(Scotland the Brave)という曲だそうです。
カーリングが誕生したときも、する前からずっと、受け継がれてきた曲なんだなぁ…ということを、恥ずかしながらこの文章を聞くにあたって知りました(笑)。
せっかくなので、試合開始前の緊張した時間に、ちょっとそのへんを思いながら聞いてみようかと思っています。


さあ、次の試合が楽しみだ!