ハウルの動く城。

良い良い。久しぶりにジブリ映画で満足させていただいたですよ。あまりよけいなことは考えず、最後までずっと集中できた。あえて気になっていたと言えば大泉洋がいつ登場するかということだったんだが、これは後述しよう(笑)。
ちなみに鑑賞媒体はDVD。ビデオ屋で働いててよかったと思いますな。


印象としては、外で働く男と家を守る女。高い能力で大きな仕事をしてるからと言って、「生きる楽しさ、愛する喜び」の意味と価値を知らなければ、心を失いかけて戦争を起こしたりしてしまう…ってとこですかな。
いま、予告編集から一部借用したけど、ハウルが「弱虫の魔法使い」ってのはどうだったんだろう?決して、弱いとは思えなかったんだが。


ソフィーにかけられた荒れ地の魔女の呪いやハウルの魔法も、結局は「信じる力」なんだね。*1ハウルに気に入られたことで荒れ地の魔女の嫉妬を浴びたソフィーは、老婆である自分を受け入れることで、自ら呪いを解いていき、というか…ここは難しいところだな。
呪いという「結果」の前にあきらめず、逆にそこから本当の自分を見いだしていく…という意味で、いわゆる「自分探し」のひとつになっている。


んが、印象が強いのは、やはりソフィーよりハウルのほうだったな。
ハウルの動く城」におけるソフィーとハウルの関係は、ちょうど「もののけ姫」でのアシタカとサンのようで…ただ、「もののけ姫」での運命は自然と人間の対比だったけど、「ハウルの動く城」では人間どうしの営みである「戦争」という状況になったことで、よりその狭間の人間がわかりやすくなったように思う。
魔法というのが「信じる力」であるとソフィーにおいて示されている以上、ハウルのそれも同質であって、ただ魔法使いの修行を積んだことで本質であるはずの「心」を失くしても、テクニックとして強力な魔法を行使するハウルの姿は、ある面で現代の若者を象徴していると見えた。
持てるものを発揮して才能と能力を無限に拡大しようとするとき、それは時として破滅に向かいかねない。技術の肥大化と空洞化は宮崎作品の一貫したテーマのひとつだが、なぜか「ハウル」からはそれをより強く感じた。観る側のボクが、そういう年齢になってきてるってことなのかな。


にしても、マダム・サリマンは怖いねー。
ハウルカルシファーと契約するシーンでの流れ星=悪魔=カルシファーの演出と、サリマンが行使する魔法の演出が同じなんだよな。あの「踊る小人」とか。
また、そのサリマンに対してハウルが最初から「怖い人」という見方を貫いているあたり、構成に隙がない。
ストーリー的には、キングスベリーの城でのソフィーとサリマンの対面の後でのソフィーとカルシファーの会話(契約のために大切なものを与えたって話)が、「あれ?そんな話してたっけ?」って気になったくらいで、他はとてもシンプルでわかりやすかったかと。
荒れ地の魔女がやたらカルシファーを「きれいな火だ」「かわいい」ってほめてたのは、そこに渇望しているハウルの心臓があったからなんだな、とか、いくつかの伏線は後から気づいてびっくりさせられた部分。


かわいそうなのはかかしのカブ。一生懸命ソフィーを助けて活躍して、呪いまで解いてもらってさぁいよいよ、ってとこで結局ハウルに全部持っていかれるという残念っぷり。まことに大泉さんGJって言うかwww
勢いでサブキャラに触れていくと、やはり弟子のマルクルたん。かわいいかわいいと萌えながら観続け、エンドロールでCVを確認したら神木隆之介クンじゃないかー!そりゃかわいいわけだ!!萌え死にてぇ…


CVと言えば、いわゆる芸能人のダイコン演技はあまり気にならなかったですよ。それ以前に映像の美しさとストーリーに気を取られてたので、声は単にセリフの運び役くらいにしか感じなかったというか。
ただ一点、国王が「サリマーン!」って叫びながら入ってきたときはひっくり返りました。大塚明夫様万歳!


さらに感想は連想で随想的になっていきます。
映像の美しさ、その見せ方も、今作では堪能させてもらったですな。特に、掃除が終わった部屋を、しばらくひっぱっておいてちょっと経ってからカメラワークの流れで見せてたりとか、普通に「おぉ」と思いました。かかしのカブの脚がすり減っていくとことか、何よりソフィーの外見がごく自然にシーン毎(ソフィーの内面ごと)に移っていくとことかもね。*2
あと美術についてだけど、DVD特典に入っていた英語版監督が、
「あの城を見て思い出したのは、『モンティ・パイソン』のテリー・ギリアムだね」
と語っていて、なるほどと納得。宮崎監督が意識していたかはどうかわかんないけど、アレは確かに同じテイストだと思った。


さすがにとりとめなくなってきたな…このへんにしておこう。
あとはコメントを伸ばす方向でww


最後に触れておきたいのは、DVDシリーズ「ジブリがいっぱいコレクション」にラインナップされている『ベルヴィル・ランデブー』について。
スタジオジブリは、どういう意図でこの作品をリストに加えたんだろう。根本的に、ジブリ作品とは方向性の違う作品だと思うんだがなぁ。
もし何かのエピソードがあるなら、誰かに教えていただきたいものだ。

*1:夢枕爆の「陰陽師」でも、「呪」について同じような解釈をしてたなぁ。

*2:主人公に四人ぶんの名前を持たせて人格を操作してみせた、筒井康隆の「夢の木坂分岐点」をちょっと思い出した。