惑星論争、ひと段落?

侵略主義米帝の野望潰える、などと物騒な表現ができてしまいそうな経緯があったようですなぁ。mixiニュースのまとめがわかりやすかったので転載。

<太陽系惑星>冥王星除外 学会の議論二転三転
(毎日新聞 - 08月24日 02:01)
 冥王星は惑星か。チェコプラハで開催中の国際天文学連合(IAU)総会で、長年の論争に終止符が打たれそうだ。IAUは23日までに、太陽系の惑星数を9個から8個に減らす最終案をまとめた。惑星を12個に増やすとした原案から一転、冥王星を惑星から降格させる。「もう、惑星に復活する修正はない」(IAU関係者)といい、教科書を書き換える歴史的な出来事となる。惑星に残そうとの意見も強かったが、科学的な判断が押し切り、決着が図られる。

 惑星増から一転、惑星が一つ減ることが確実になったIAU総会。その転機は22日昼(日本時間同日夜)に開かれた公開討論会だった。

 「賛成の諸君は挙手をお願いしたい」。今回の総会で退任するエッカース会長が、約300人の参加者に賛否を確認した。惑星増の原案は賛成が4割強、冥王星と周辺の星で構成する新たな概念「冥王星族」を命名する案は約2割、冥王星とその衛星「カロン」を二重惑星とする案は、ほとんど手が挙がらなかった。

 反対論の口火を切ったのは、天体力学を専門に討議した第7委員会のアンドレア・ミラーニ委員長(イタリア)。「天文学が長年培った伝統を破壊するものだ。こんなものは科学的定義とは言えない」。同委員会がまとめた反対文書を、定義案作成者が居並ぶ壇上でたたきつけた。「たった7人で作った定義案を、なぜ受け入れなければならないのか」「惑星数が増えると、教育現場に混乱をもたらす」。他の参加者からも反対が相次ぐ。

 司会を自ら買って出たエッカース会長が「時間がない。次の議題に入りたい」と促すと、一斉にブーイングが上がった。「非民主的運営だ。IAUの歴史で今日は最悪の日だ」(米国人天文学者)との声も出るなど、会場は大混乱に陥った。

 エッカース会長としては「100年に1度の大改革」(渡部潤一国立天文台助教授)を成し遂げて花道を飾りたい−−。反対論を大幅に受け入れた抜本的な見直しをした最終案が出来上がったのは、それから数時間後だった。

 当初案は、米国人が発見し、社会的、歴史的に認知されていた冥王星を惑星として残そうという政治的配慮に引きずられた面が否めない。

 定義案作成に携わった渡部助教授は「定義の検討委員会では、幅広い視点で検討したが、最終的には純粋科学的に決めたいという天文学者が多かったということ。IAUとしては、星座の数を88と決めた1928年以来の大仕事だ」と総括する。【プラハ会川晴之】

ここからが気になるところ。

 ◇発見の米国が執着

 冥王星(プルート)は1930年に米国人天文学者クライド・トンボーが発見した。その名はギリシャ神話の冥界の王にちなむ。米国人が発見した「惑星」は冥王星だけで、米国では強い愛着を持たれている。冥王星発見の年に登場したディズニーのキャラクターで、ミッキーマウスの愛犬が「プルート」と名付けられたのもその表れだ。

 今回の惑星の定義案をめぐり、米ワシントン・ポストは「ウォルト・ディズニーも、冥王星が惑星の地位にとどまることを望んでいるだろう」などと報じていた。

引用の後で揶揄します。

 だが、冥王星は地球など他の惑星とは異なり、傾いただ円軌道を持つため、発見当初から「惑星ではない」という意見があった。その後の観測技術の向上で、月よりも小さいことや、太陽系外周部に同規模の天体が多数あることが判明し、90年代に「冥王星は惑星か」という論議が高まった。

 IAUは99年、「冥王星の立場を変更することはない」との見解を示したが、05年に米の研究チームが「冥王星より大きな第10惑星(2003UB313)を見つけた」と発表、「惑星とは何か」を示す定義作りを求める声が強まっていた。

 結局、最終定義案では、冥王星は惑星から降格させ、セレスやカロン、2003UB313と共に惑星ではない「矮(わい)惑星」と位置づけられた。

 井田茂・東京工業大教授(惑星科学)は「八つを惑星にする考え方は理論的に受け入れやすい。今回の議論は、観測技術が進歩し、惑星への理解が進んだ結果だ」と話す。【下桐実雅子】

 ◇困惑の教科書会社

 2年前に開館した国立科学博物館(東京・上野)新館の宇宙コーナー入り口には「水金地火木土天海冥」と明記した大きな看板が立ち、それぞれの惑星の写真と説明が順に並ぶ。一番右が冥王星だ。洞口俊博理工学研究部主任研究官は「惑星が増えたら、展示の手直しが大規模になると心配していた。冥王星が減るだけなら、小さな手直しで済む。この混乱で、子どもたちの星への関心が薄まらないことを願う」と話す。

 教科書会社も議論の行方を注視する。

 最大手の東京書籍(東京都北区)は毎年秋に翌年の教科書の印刷を始める。「冥王星が外されるなら、(惑星が増えるより)一層大きな話だ。教科書会社によって修正時期がずれると、入試で混乱を招きかねない。天文学会などが早急に対応方針を示してほしい」(中学理科編集部)と話す。

 文部科学省によると、教科書で記載の変更が必要になった場合、発行元が判断し、同省の承認を得て訂正できる。承認に要する時間は申請から1週間〜1カ月程度。発行部数の多い会社にとっては、来春の教科書印刷に間に合うかどうかギリギリのタイミングだ。

 冥王星が惑星でなくなるという事態は、占星術の世界に影響を与えるのか。毎日新聞に占いを提供しているマーク・矢崎さんは「今回のことは、冥王星を惑星と呼ばないようにするだけのことで、冥王星が消えてなくなるわけではない。星占いとしては影響はない」と話している。【永山悦子、江口一】 

 ■惑星定義の最終案骨子

・太陽の周りを回る、自らの重力で球形となる天体

・軌道上で圧倒的に大きい天体

冥王星やその周辺の天体は、惑星とは異なる「矮(わい)惑星」とする

・以上の結果、太陽系の惑星は水星、金星、地球、火星、木星土星天王星海王星の8個となる

 【ことば】冥王星 太陽からの平均距離は約59億キロ、直径は約2300キロで月の3分の2。軌道は細長いだ円で、約248年かけて太陽の周りを回る。米航空宇宙局(NASA)が今年1月に打ち上げた無人探査機「ニューホライズンズ」が2015年、探査機として初めて約1万キロまで接近する。

ここでもディズニーが一枚噛んでるよ。
だから嫌いなんだよな。エンターテイメントの主役面をしながら、地味なとこで政治的な印象操作を謀ってるようなとこが見えてさぁ…


この話題に関して、グリフォンid:gryphonさんのとこでこんなやりとりを。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060824#p3

# pon-taro 『ちくしょうちくしょう。フィールズ賞の話も惑星の話も気になってたニュースなんだけど、ボクにはこんな記事書けないわー。
というわけで尻馬に乗らせていただきますが、「奇人数学者」ってのはいいですよね。こういう人たちが、銀河の隅っこで大百科事典を編纂してるんでしょうか(アシモフでしたっけ。元ネタは読んだことないんだけど)。
惑星の話は、前段階で「12個に増やそうぜ」ってニュースがありましたよね。実は、現状の(冥王星を含む)惑星にはアメリカが発見したものがなくて、新たに加えられようとしたうちのひとつがアメリカで発見されたものだって話です。
星一個がかかった議論だもんなぁ。ロマンだなぁ。』

# gryphon 『ルールの中で闘う以前に、ルールを決める戦いがあるという話の一例になりますね』

# HAGANE 『(冥王星を含む)惑星にはアメリカが発見したものがなくて<たしか冥王星を発見したのはアメリカだった筈です。』

# pon-taro 『グリさん>この場合は、ルールを決めたら即結果が出ちゃうから、前の話とはちょっと違いませんかね?
HAGANEさん>先日はお会いできず残念でした。お久しぶりです。
発見者の件は…そうだったんですか?わーい。夜にでも調べてみようっと♪』

というわけで調べてみたんだけど、一覧表みたいなのが見つからなかったのでコピペは断念。最終的にウィキペディアを参照しながら以下を書きます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%83%91%E6%98%9F
水〜土までは昔(それこそ紀元前とか)から知られてて、天王星がイギリスのハーシェルさん(天文台の名前にもなってたなぁ)、海王星は仏のルヴァリエさんと英のアダムスさんが予言して、ドイツのガレさんが発見したそうです。で、肝心の冥王星
冥王星は、アメリカのローウェルさんが存在を予言し、1930年にローウェルさんの弟子のトンボーさんが発見したとのこと。
この発見に動いたのは、上述のようにディズニー。1929、30年から登場し始めた犬のキャラクターに「プルート」の名をつけました。
さらに、1940年になると放射性元素のひとつが「プルトニウム」と命名。すでに名付けられていた「ウラン(天王星:ウラヌスに由来)」「ネプツニウム海王星ネプチューン)」と並んで、慣習的に惑星と見なされる歴史を歩んできた/歩まされたわけですな。
んが、元来その質量や公転軌道、組成などから天文学者の間で冥王星を惑星と見なすかどうかは議論の対象だったという経緯があり…今回、噂のカロンセドナ、2003UB313を新惑星と認定するかどうかの会議において、「そもそも冥王星が惑星だっていうのがおかしくね?」と急転直下、あわれ冥王星は惑星の座を追われてしまったのでありました。
ちなみにカロン冥王星の衛星(か、もしくは冥王星と対をなす二重惑星)。セドナと2003UB313を発見したのもアメリカだそうです。なんつーか、よくある「欲張りすぎて元も子もなくなる」話みたい。22世紀には童話になってたりして。


アメリカの横暴を問うわけじゃなく(ていうかそもそも横暴なのかどうかもわからんしね。状況証拠はバッチリだが)、これを期に、エッジワース・カイパーベルトだとかオールトの雲だとか矮惑星だとか、今後常識になっていくであろう天文用語に触れまくれたのが単純にうれしい。
つまり、「太陽>惑星(衛星)」っていう小さな系じゃなくて、「太陽>惑星(衛星)>まだよくわかってないその他もろもろ」という、新たな太陽系像が提示されただけのことなのですよ。ボクらがどう解釈するかに関係なく宇宙は宇宙として存在してるだけのことで、今回の件はいわば「太陽系の衣替え」みたいなものなんじゃないかと思っています。


よく(特にmixiニュース日記なんかで)
冥王星がなくなった!」
みたいな失望感を見かけるけど、むしろ「最初のエッジワース・カイパーベルト天体」と考えたらよりロマンが広がらないかな。太陽系には太陽と諸惑星とその衛星、だけじゃなく、今まで惑星と考えられていた冥王星を含むたくさんの天体が巡っているって…そのほうが壮大でカッコいいと思うんだけどなぁ。


みなさんどうですか?
冥王星がなくなるわけじゃないんですよ。
宇宙はもっと広いんだー!


最後に。
セーラームーンがどうしたとかって話もよく見かけるけど、勝手ながら一番そういうことを言っていそうだったこの人のブログを見てみました。
URL:http://yaplog.jp/strawberry2/archive/9315
URL:http://yaplog.jp/strawberry2/archive/9379
すげー!やっぱどっか違うわこの人。さすがだわ。
過去ログ探すのが大変だったけどww