マッスルハウス3観戦記を書き上げてみた。

前回までのあらすじ。
「プロレスから逃げない」を合言葉にマッスル後楽園大会に臨んだツルティモ・ドラゴン・ジムのメンバーたち。東京愚連隊との「控え室争奪マッチ」で激闘の末に勝利を掴みかけるが、「ジャパンテレビのディレクター」をなのる鶴見亜門そっくりの三流亭鶴見が突如来場。マッスルハウスの興行中にもかかわらず、ホールは人気番組「頂点」の新春特番にジャックされてしまう。
ツルティモジムの面々は全員老衰で死亡した「頂点」レギュラーに代わって大喜利に出演することになるが、彼らの目の前で、ゴージャス松野が「プロレスとかけて大喜利と解く。そのココロは、どちらも受けることがすべて」と言い残して、帰らぬ人となってしまう。
松野の言葉を胸にプロレスと正面から向かい合うことを改めて誓った彼らは、総合演出・鶴見亜門の「信長の野望」式計画のもとに、まずは横浜を本拠とする大日本プロレスの征服にとりかかる。「頂点」収録のためといつわって大日本勢をおびき出すことに成功したマッスル軍だが、肝心の5対5対抗戦であっさり3タテをくらい、今日のチケット代、グッズ売り上げをすべて奪われることになってしまった。
しかし、この事態をも省みずに食っちゃ寝を繰り返していたマッスル坂井は、「食べてすぐ寝ると牛になる」という格言通り身体の半分が牛化。牛(バッファロー)と人間(マン)の中間、すなわちバッファローマンと化した坂井は特効つきの必殺「ハリケーンミキサー!」で大日本勢を蹴散らし、大日本のエース・伊東竜二の妻にして団体レフリーも務める李日韓をバラバラに引き裂いてしまう。
日韓パーツを取り返すためにマッスル軍に再度挑みかかる大日本勢。関本大介男色ディーノのゲイレスリングの餌食となっている間に、6つに分かれた日韓パーツの5つまでを奪回。残る頭部をも取り返しかけたその瞬間、伊東竜二が有刺鉄線バットで"黒天使"沼澤邪鬼を襲撃!リング内外が驚愕する中、舞台が暗転し、スローモーション化すると同時に、伊東の胸中が吐露されはじめた…

スローモーション中。

「俺は大日本プロレスのエース、伊東竜二。人は俺を、デスマッチ・ドラゴンと呼ぶ。
 デスマッチのリングでは怖いものなしのこの俺にも、ひとつだけ怖いものがある…
 …それは、妻の李日韓だ。
 毎日毎日、炊事、洗濯、マッサージ。タイトルマッチを終えた夜でも、腕を骨折した日でも妻へのマッサージを欠かしたことは、なかった。
 …俺、いつになったら復帰できるんだろう?このままでは、『マッサージ・ドラゴン』になっちまうよ。
 デスマッチ・ドラゴンと、マッサージ・ドラゴン。
 竜は2匹もいらねぇ。
 俺は、デスマッチ・ドラゴンだ!!」

伊東竜二にとって最大の敵、それは妻である李日韓だった。回想から覚めた伊東はバッファローマンマッスル坂井を殴打。狂気に憑かれたようにバットを振るう伊東は、制止にかかる沼澤を有刺鉄線バット越しのキック、アブドーラ小林も額への画鋲攻撃で撃退。リングの隅で関本を凌辱し続けるディーノとも目が合うが、伊東はこの二人はスルー。ディーノは、安心して関本を襲い続ける。
ついにリング上を占拠した伊東は、日韓の頭部パーツをそのバットで乱打し始めてしまう!

その時、あわててリングに上がってくる(スローモーションだが)二人の人影。それは演出家の鶴見亜門と、「ドッキリ!」と書かれたボードを手にした、バラバラになったはずの李日韓だった!しかし、まったく気付かず頭部パーツを殴りまくる伊東。
ドッキリボードを亜門に渡した日韓は、夫を振り向かせると怒りのビンタ炸裂!マウントポジションからビンタを乱れうちにすると、日韓は夫の倒れるコーナーと逆サイドのコーナーに登る。見栄をきった日韓、どこからともなく現れた黒子に支えられ、スローモーション・対角線・ドラゴンスプラッシュで離陸!伊東に命中しそのままカバーに入るが、目にもとまらぬスローモーション・腕ひしぎ逆十字で、骨折している夫の右腕をガッチリ捕獲!伊東は、たまらずギブアップを宣言した。

場内の照明が復活。スローモーションも終了。それと同時に村田アナウンサーが
「おーっと、乱入した李日韓が、ここでマイクをとったぁ!」
「デスマッチとして、結婚と解く!」
リングを囲む全員が、「そのココロは?!」日韓は、倒れた夫をにらみつけながら、鼻息も荒く一言。
「どちらも、覚悟が必要です!!」
この名ゼリフに、鶴見亜門は思わず
「うまい!日韓さんに座布団1枚!!というところで本日のマッスルハウス、このへんでお開きとさせていただきます」
めでたしめでたし。

文章にして、この面白さがどれだけ伝わることか。
とにかく、日韓さんが大活躍!(そればっか)

マッスル坂井が締めのマイク。
「お正月から、たくさんのご来場本当にありがとうございました。
 大日本プロレスさんもありがとうございます。世間では、色んな団体が楽しそうに対抗戦をやってますが、自分たちならどんな対抗戦ができるかと考えて、こんな対抗戦をやってみました。
 大日本プロレスさんは、10年以上も『あんなのはプロレスじゃない』と言われ続けながらデスマッチを続けてきて、今ではすごい人気です。
 自分たちも「プロレスじゃない」と言われますが、10年後、一つのプロレスのジャンル、あり方として定着していければいいなと思っています」

さらに坂井は「今回、伊東さんはまだ骨折が治っていませんが、骨折に効くこのツノをプレゼントしたいと思います」
ツノを受け取った伊東は「3月くらいに復帰したいと思います」との事。
最後は、黒子スーツもはちきれそうな「本当のマッスルファイター」関本を中心に、3、2、1、マッスル!マッスル!
大日本勢を交えた練習風景のエンドロールが流れる中、アントーニオ本多と"黒天使"沼澤邪鬼が、手を取り合って本当に幸せそうに踊っていた。


後半から終盤にかけて、今回も一気に突っ走ったマッスルハウス3。ざっくり振り返るつもりが、またしても大長編観戦記になってしまいました。まとめるにあたって、今回もextreme partyさん(http://xxtreme.web.infoseek.co.jp/index.html)の詳細な写真つき観戦記に大変お世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。


さて、総評。
面白かったです。これは間違いない。一番最初に「事前の情報まったく無しにこれだけの観客を動員できる興行は他にない」と書いたけど、この問答無用の面白さによって、噂が噂を呼んでこのムーブメントを巻き起こしているんでしょう。その牽引力が「今まで面白かったから」というだけだというのは、何度も繰り返すけど驚異としか言いようがないと思います。


が。


マッスル坂井は、「これがぼくたちにとっての『プロレス』」と言います。
しかし、マッスルハウス3について書かれたブログや観戦記、そして何より会場の観客から、「『プロレス』を観た!」という空気が、まったくと言っていいほど伝わってきていないように思います。自分としては、この齟齬がこれからのマッスルに、いい影響にはならないんじゃないか、ということを考えました。
このまま行けば、マッスルの観客はいわゆる「プロレス」からの逸脱を望み期待するばかりで、興行の中にある「プロレス」は、その期待に応えるためにどんどん痩せ細っていくんじゃないか。それこそ武道館での興行が実現したとして、その興行に「プロレス」の居場所はあるんだろうか?ということです。


これは、マッスル坂井にとっての「プロレス」が何か、ということにかかってくると思いますが、前回のマッスルハウス2でのアントーニオ本多vsフランチェスコトーゴーで号泣していたマッスル坂井の顔を思い出すにつけ、その「プロレス」は意外にいわゆる純粋な「プロレス」なんじゃないか、そう思えてなりません。
その一方で、例えば今回のゴージャス松野vs飯伏幸太などは、客席が理解するまでに始まってからかなりの時間がかかっていたように思います。マッスルがこのままエンターテイメント化していけばいくほど、この「客席に届くまでの時間」は広がっていく一方なんじゃないか。場合によっては、「プロレスの試合以外は最高だった」という感想がかなりを占めてしまうような、そういう方向にマッスルは進んでいってしまうのではないか。


プロレスファンでありマッスルファンである自分は、この「対世間」の壁にこれからのマッスルがどう立ち向かっていくのか、興行から2週間が過ぎたいまでもなお、期待と不安で落ち着かない気分でいます。一ファンの取り越し苦労なんですけどね。


とにかく、この面白さに加えて、勝手に危うさまで重ねてしまった自分としては、今後も絶対に目が離せません。
マッスルとよく似た名前のハッスルが「既存のプロレスをぶち壊す」と言いながらズルズルのグダグダになっているのを横目にしながら、マッスルが既存のプロレスを分解していくのに、これからもついていくつもりです。
以上。長々と失礼しました。