天才・佐藤健‐来るべき電王総合感想のために

仮面ライダー電王の主人公、野上良太郎役の佐藤健(さとう・たける)の演技があまりにも神すぎたので、まだ10巻までしか見てない(全12巻)けど、絶賛しようと思います。


そもそもこの電王は、設定じたいがわりと複雑なのよね。大きなテーマは「時間」、そこから派生して、人の「記憶」や「欲望」、あるいは時間に沿って運行されるという意味から「電車」がモチーフになってたりとか、とにかくゴチャゴチャと入り組んでるわけです。さらに、主要キャラの一人が天文ファンということから「星」もちょっと入ってたり。
正直、時間テーマはかなり失敗してると思うんだけどね。ま、それは電王のせいというよりは、時間テーマそのものの難しさなんだけど…それはそれで、そんな難しいテーマを選ぶほうが悪いっていうか(苦笑)。


さてと。
佐藤くんの演技がすごいって話ですな。
この電王というライダー、そして佐藤くんの演じる野上良太郎は「仮面ライダー史上もっともヘタれな主人公」の異名をほしいままにしてるキャラです。泣き虫でこそないものの、自転車に乗れば転び、転んだ先にはヤンチャな兄ちゃんたちがいて、さんざんイジめられた末に鬱憤晴らしに蹴った缶がまたその兄ちゃんらに当たる、という。一事が万事、この調子。
こんな良太郎がひとりで悪と戦えるはずもない。なので、良太郎はみんなの力を借りて戦います。
その「みんな」というのが、「イマジン」。
「イマジン」というのは、味方の奴もいるけど敵もいる。本来は時間流に漂うエネルギー体なんだけど、人間の「記憶」に寄生してその欲望を(一方的に)かなえることで、その人間の「過去」に遡り、過去を破壊することで「現在」「未来」を改変しようとする悪い奴らです。で、そんなイマジンたちの中で、何の因果か良太郎とつるんでしまい、「こっちのほうが面白いから」という理由で同族たちと戦うイマジン、「モモタロス」「ウラタロス」「キンタロス」「リュウタロス」たちが、良太郎の味方なわけですね。これはおおざっぱな話なんだけど。


というわけで、モモやウラたちイマジンが「電王」に憑依…というか、電王の身体を借りて、モモたちが戦うことになる、と。電王は弱いから(笑)。
で、モモたちイマジンズは、戦うときにだけ電王に取りつくわけじゃありません。暇なときは、生身の良太郎に憑依します。つまり、佐藤くんの神演技というのは、イマジンズに憑依されたときのそれぞれのキャラの演じ分けが抜群に巧いってことなんですな。
イマジンズは普段はそれぞれ化け物みたいな姿、すなわちスーツアクターさんと声優の声でキャラ付けされてるんだけど、良太郎に憑依したときも声はそのまま。良太郎=佐藤くんは、スーツアクターの動きと声優の声に合わせて、それぞれに憑依されたときの演技をビシッと演じ分けている。
オープニングで、それぞれに憑依された良太郎が同じ画面の中にいるカットがあるんだけど、とても同じ役者が衣装を変えただけには見えないわけですよ。


で、そういう演じ分けだけならもうずっと佐藤くんが電王でやってきたことなんだけど、今回、全放送分視聴完了直前でわざわざこのテーマで日記を書くのには、きっかけがあったのです。
もう1年前の作品だし、今さらネタバレも何もないのかもしれないけど、なるべくネタバレにならないよう、以下はちょっと抽象的に書こう。


その回、佐藤くん演じる良太郎に、とあるものが憑依します。そのものはもうずっと登場してて、ある程度見慣れたものだったんだけど…その良太郎を演じた佐藤くんの演技は、本来のそのキャラの演技にまるで瓜二つだったわけですよ!
ああ、文章で伝えるのがもどかしい。「○○が憑依した良太郎」ではなく、「良太郎に憑依した○○」を、そのまんま演じてしまった、という。伝わるかなぁ、これ。
俺は普段からドラマや芝居を見ない人間だから、役者の演技をどうこう言う資格はあんまりないかもしれないけど、あのワンシーンはすごかった。そういう瞬間でした。


電王については、全部見たらまたまとめて感想書くつもりだけど(ネタバレ全開じゃないと書けねえだろうなぁ)、とりあえず言えるのは、佐藤健という役者を見せてくれてありがとう、と。それだけはたぶん、最後がどうなっていようと変わらない評価だと思います。


でも…自分はかろうじて仮面ライダーBLACKがやってたって世代だから、仮面ライダーそのものにあんまり思い入れがないから見られてるんじゃないか、って気がする。
「敵の力を使って戦う」あたりは伝統だけど、1号やV3やアマゾンが好きな旧来の仮面ライダーファンには、この作品はどう見えているんだろうか。機会があったら、昭和シリーズファンで電王も見た、という人の意見が聞いてみたいなぁ、と思うところであります。ま、作品そのものについては、また今月中にでも。