窯変・源氏物語(著・橋本治)

pon-taro2006-01-21


中央公論社から、単行本全14巻というなかなかの嵩のあるもの。
いわゆる正当派の『源氏』(与謝野訳とか谷崎訳とか寂聴訳とか)はなんかくだくだしさを感じてしまって近づきがたかったんだが、
「桃尻語訳っていうのは、直訳なんです」
という橋本氏の自説に触れたあとで出会ったこの『窯変・源氏』には、自然と手が伸びた。確か、二十歳くらいの時だったかなぁ。

で、読んでみると、これがなかなか。
なにが正調『源氏』と違うって、こいつは「光源氏の一人称」で描かれるのだ。
以下、雰囲気で。
「私の周りで、女達が騒ぐ。女達が騒ぐことで、私の周りの男達も騒ぐ。平らに安らかなる御代にあって、私はただそこにいるだけで御代の有り様を揺るがす存在ではあった。
もったいなくも帝の御寵愛を賜り、男達にかしずかれ、女達に崇められるこの「私」とは何なのだろう?
私は、今まで、語られるだけの存在だった。「光る君」として物語に閉じこめられ、私は「私」であることを認められていなかった。
今こそ、私自身が私の言葉で私を語ろう。
聞くがいい。「私」が、何者であったかを。」


こういうの、久しぶりでなんだか恥ずかしいなぁ。