全日本キック速報。

あー。
日ごろあれだけ石川を応援しておきながら、今日の目当ては寺戸‐真二なわけですよ。
この不義理が祟ってか(?)、後楽園に到着したらすでにオープニング・ファイトの3試合目が始まってました。

オープニング・ファイト第三試合
○ダイスケ・ルークハマッコ‐荒井崇志●
(3R判定 3‐0)
1R後半から観始めたのだけど、パンチの強い荒井が攻めまくる展開。ロープに詰めて連打をまとめ、ダイスケをぐらつかせたところでゴング。
2Rに入るとダイスケがムエタイ殺法バリバリで逆転。組み付いてのヒザが冴え、荒井はフラフラに。
ダイスケの支配権は3Rに入っても揺らがなかったが、ダウンを奪うにはいたらず。3者とも29‐28でダイスケが判定勝利。


第一試合・ウェルター級ランキング戦
金統光ウェルター級7位)‐森卓(ウェルター級9位)●
(延長4R 判定 3‐0)
本戦中は差のない試合だったけど…延長Rで森がスリップ気味に倒れると、これを和田良覚レフリーにダウンと取られてしまう。金応援団の歓声と森応援団の怒号が飛び交う中、森は焦って前に突っ込んでしまい、待ちかまえる金のカウンターをモロに浴びて今度は本格的にダウン…
結局これが致命傷になって、森は無念の敗退。悔しいなぁ。悔しさを察して余りある。
これはアレだな。森は「オレは和田のせいで負けたんだ。和田は和田でも和田京平を連れてこい!」と言うしかないな(全日本つながりネタ)。


第二試合
○佐藤皓彦‐中園貴弘●
(3R 判定 3‐0)
ロンブー淳がチリチリパーマにしたみたいな風貌の中園が景気よく突進していくが、佐藤が冷静に捌いては的確に打撃を当てていく展開に終始。
が、合計4度のダウンを喫しながら食らいつき続けた中園。入場時の時事ネタ「ゾノバウアー」に勝るとも劣らぬインパクトを残したっていうか。
なんつーか、全日本キックでは一興行に一つはこんな試合があるような気がする。


第三試合
○黒田英雄‐宝樹まもる●
(1R 40秒 KO)
ゴング早々に突っかけた宝樹だったが黒田の反撃右ストレートを顔面で受けて轟沈。40歳(黒田)と39歳(宝樹)による秒殺劇。
宝樹選手の散りっぷりは見事だったなぁ。失礼な言い方だけど、そうとしか言いようがないです。それこそホリ川戦みたいな消耗戦ならともかく、ね…


第四試合 対抗戦
○藤原王子‐山田健博●
(3R判定 3‐0)
リンクもアンテナ登録もしてないが、はてなブログで時々コメントなどさせている方で、レグルス池袋で藤原王子に練習を見てもらっているという方がいます。
こないだ全日本プロレスで、吉江選手のお義母さんに人情のありがたみを教えていただいたボクとしては、当然王子を応援するわけですよ。
あ、同行者は山田応援だ。まぁいいや。
ペース的には体格・身長で勝る山田が押し気味だが、王子はキレの良いミドルを出しながら踏ん張る…と、一瞬のスキを突いて左ヒジ一閃!ジリジリとした攻防の中でダウンを奪う!いいぞ王子!!
…あ、山田選手、王子のヒジに対しては無警戒なのかも。同じようなヒジをまた食らってるわ。
このダウンが決定打となって王子が判定勝利。おめでとう!
同行者撃沈。うわ言のように「森も負けて山田も負けた…もうおしまいだ」と。
興行にはやはり人情が欠かせないという大事な教訓をもらいました。(意味不明)


第五試合 対抗戦
○中村高明‐貴之ウィラサクレック●
(2R 2分22秒 KO)
最近の全日本キックにおいてもはや名物となった観のある、憎んでも憎み足りないが憎みきれないWSR(ウィラサクレック)軍団が、今大会で唯一の参戦。あの揃いの赤いTシャツもずいぶん見慣れたなぁ。
ノッソリと背の高い中村の風体に呆気にとられる中、試合が始まると今度は貴之のありえないほどのブン回しの攻撃にド肝を抜かれる。
「博多のとんこつファイター」KAWASAKIの攻撃を「中パンチ」と言うなら、貴之のそれは正に「大パンチ、大キック」。打ち終わりに体が泳ぐのが当たり前のようなパンチで、ノッソリ飄々とした中村に襲いかかる。
対する中村は冷静に距離を詰めて細かいパンチとヒジ、ヒザで丁寧に攻める。浅い右ボディと小さい左フックの連打は、パンチングボールで練習しているような感じだったかな。
アグレッシブと言えばこれ以上はないようなアグレッシブな貴之をWSR軍は大歓声で後押しするが、昨年のミドル級トーナメントで武蔵の実弟・TOMOに敗れたとは言え、やはり全日本ミドル級の一角を支える中村が、ヒザを何度も突き刺してのKO勝ち。
でも、勝ってもやっぱりどこかノッソリしているタカアキ君だったのでした。


休憩明けの大発表
次回6月大会で、前回の日本vsタイ5対5マッチでヒジによるカットでヨードクングライに敗れた小林聡がリベンジ戦、さらには同大会で山本真広を完封したワンロップ・ウィラサクレックに、山本元気が挑むことが発表された!
元気vsワンロップかー!出し惜しみしねぇな、全日本キック!!


第六試合・全日本キックライト級ランキング戦
○増田博正‐海戸淳●
(3R 判定 2‐0)
互いにキック会場とも思えぬ黄色い声援を負っての対決。ちなみに海戸は元・凱斗亮羽。これがリングネームで、今の名前が本名らしい。
思えば、この人もボクの中ではかなり異色の選手。そもそもは『クルクルよく回る選手だなぁ』と思っていたらテコンドー経験者とのことで『なるほど、キックって言ってもいろいろな人がいるもんだ』と感じたものだったが、最近の彼はむしろ非常にオーソドックスなキックスタイルにキャラチェンジ。ちょっと前のFFに例えるなら「あおまどうし」が「せんし」にジョブチェンジしたようなもので、ずいぶん面食らったものだ。
しかし、本名に戻してスタイルも戻ったのか、今日の海戸は序盤からカカト落としを連発。さらには上段後ろ回し蹴り、中段後ろ回し蹴りとテコンドー殺法全開。
だが…なんとなく「かけ逃げ」っぽい印象もあったんだが、これに増田がみるみるとんでもない形相になっていく!
入場時の黄色い声援に気をよくしていたような甘さは微塵もなく、鬼のような顔つきで海戸をシバき回す増田。
両者ダウンがなかったこともあって判定じたいは大きく離れはしなかったが、私怨でもあるんじゃないかって思えるくらいの増田の目つき、顔つきが妙に印象に残る一戦ではありました。


第七試合・セミファイナル・対抗戦
寺戸伸近‐真二●
(3R 判定 2‐0)
さぁ、やってきました俺メイン。前回日本vsタイ5対5マッチ興行での割澤戦において、日タイ戦に勝るとも劣らないインパクトのKO劇をやってのけた寺戸と、J-NETの怪物、小柄な体格ながら驚くべき打たれ強さと徹底したロー狙いの戦法が持ち味の真二との一戦。迷うよなー。どっちにも肩入れできないよなー…
が、試合が始まると、当然ながら寺戸への応援が目立つわけで、自然と真二よりになっていた。
寺戸は打ち分けが巧い。各種パンチにボディ打ち、さらにはローと、さすがの真二でさえ打たれすぎじゃねぇか?!と思えるほどにメッタ打ち。しかも、堅い真二のガードを抜いてヒットさせるのも再三、再四。
対する真二は、打たれ強さにまかせて真っ向から踏み込み、打たせるだけ打たせて強烈なローを放っていくいつものパターン。が、今日はややパンチも多く見える…というのは、寺戸の攻めの多彩さと無縁ではないような気がした。
1Rから3Rまで全く変わらない、寺戸の手数と真二の粘り。それでもホールが沸きかえるのは、対抗戦だからってだけではないはずだ。
試合はその攻めであの真二を何度もグラつかせた寺戸の判定勝ちだが…これが5R戦だったらわからんね。さすがに終盤は寺戸も疲れてたし。


第七試合・メインイベント・対抗戦
大宮司進石川直生
(3R 判定 2‐0)
とりあえずボクは石川好きなので…この結果はひたすらに残念!!

両選手の入場だが、大宮司のセコンドにはなんと所属するシルバーウルフの頭目(ヘッド)、魔裟斗の姿が。『俺らのアタマ』の来援に、ゴンタ揃いの大宮司応援団が沸き立つ。
対する石川も、自らデザインしたガウン、トランクスを身につけ、やはり大歓声を受けてトレードマークの霧吹きを披露。

試合開始から、動きの固い石川を一気に追い込む大宮司。彫刻のような身体で細い石川を押さえつけ、見るからに強烈なパンチで猛攻。「スピードもパワーも自分が上。気をつけるとしたらボクシング技術」と語っていたはずの石川だが、大宮司のそのパンチの前にいきなりの大苦戦…さらには、3分間浴び続けたそのパンチをラウンド最後にモロにくらい、痛恨のダウンを喫してしまう!

「ボウズ頭で日サロなんか行ってる奴は倒しちまえ」と自分を棚に上げて激励したという相思相愛の盟友・山本優弥の、インターバル中の必死のゲキが効いたのか、それともいわゆる「一発もらって目が覚めた」ってやつか、石川の表情は強烈なダウンの後とは思えないほど力強く見えた…のは、贔屓目だけではないと思う。

2R、急に石川の動きに「らしさ」が戻る。中間距離では特筆する動きはないものの、組み付いてガタイのいい大宮司を左右に揺さぶりながらヒジ、ヒザを果敢に狙い、投げも決まる。来た来た来たーっ!!

試合中は大興奮していて考え及ばなかったが、見た感じ明らかな体格差(石川がハリガネなら大宮司はコンクリ)があるにも関わらず、組み付いてからあそこまで大宮司をコントロールできたっていうのは、石川が「パワーでも自分が上」と言っていたのはあながち単なるビッグマウスでもなかったのかな、と。

「俺らのアタマ」魔裟斗の前でみっともない応援はできんとばかりに、地鳴りのような「ダイグ」コールの大宮司陣営に、どっちかっちゃあ「キック乙女集団」なイメージの石川応援団も、驚くほど力強い「ナオキ」コールでがっぷり四つ。
石川すげぇ。今や、こんな試合する選手なんだなぁ…

3Rも半ばを過ぎ、ついに石川のヒジが大宮司の左眉上を切り裂く…っていうか叩っ切った!うぉーーっ!!やったーーっ!!
が、ドクターの判断は続行。ここから、試合は一気に凄惨なものになっていく。

「これ以上切られるとヤバい」とばかりに特攻を仕掛ける大宮司に対し、石川はむしゃぶりついてヒジ、ガードされると見るやヒザを叩き込む。
残り時間は1分を割り、互いに引くことのできない超接近戦が続く。もつれ合い、殴り合う両者の戦いは、もはや「ケンカ」と化していた…が。

だが、なんだよな。気持ちはすげーわかるんだが、石川の「抱え込んで傷口に連打」とか、「勢い余って後頭部にヒジ」というのは…正直……やりすぎにも思えた。イケイケムードの石川応援団、売られたケンカを迎え撃つ大宮司陣営はともかく、一歩引いた立場の一般ファンの目にはどう映っていたんだろう。
この終盤のガムシャラさには、石川押しのボクであってもちょっと疑問であって…


結局、勝利を手にしたのは顔面を血に染めた大宮司だった。石川、スーパーフェザー級王座戴冠から初の黒星。プロ戦績としては9敗めになるという。
非常に残念であり非常に悔しい結果。これがもしタイトル戦だったとしたら、残りの2Rはおそらくは石川のものにできていただろう。だからこそ、3Rしかないこの試合で、1Rに奪われたダウンは大きかった。迂闊だった。
あえて言うならば、この試合はサドンデスマッチ。2、3Rの支配力とこのカットを合わせて、28‐28ドローという裁定もあり得たはずで、つまりはどこまでいっても「無念!」の敗退である。付け加えておくと、この「28‐28」を示したジャッジも一人だけいて、それが第一試合で微妙なダウンを宣告した和田良覚レフリーだったという…


試合後、マイクを取った大宮司
K-1に60kg級を作らせる」
と宣言。この姿勢やよし。今まで、K-1であれPRIDEであれ、求めて上がった選手はいくらでもいるが、自分の居場所を作らせようとした選手はいないはずだ。
このマイクを聞いた石川は、
「それは自分が言いたかった台詞だ」
とつぶやいたという。

石川、がんばれ。