8・27全日本プロレス両国国技館大会のこと。

例によってシンプルかつ単純に書こうという意志だけはあります。メインはともかく。
ちゃんとした結果はスポナビさん→
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/live/200608/27/index_b.html


さて、DDTの興奮冷めやらぬ中、総武線に飛び乗って両国へ移動。あぁ、ちゃんこ食いてぇ。
国技館は、この同日に横浜文体で興行をやってるはずの某老舗格闘技団体の10周年以来だなぁ。来月は大相撲九月場所。相撲も一度は生観戦したいものだ。


当日券販売所は1階席売場と2階席売場とに分けられていて、安い2階席売場には列が出来ていた。何の気なしに2階席売場に並びながら、ふとあることに気づく。
「ここは国技館じゃねぇか!」
当たり前っちゃあ当たり前だが、大事なのはその中身、つまりは座席配置。縦穴状のさいたまSAほどではないにしろ、スリバチ状の国技館は、後ろに行けば行くほど、上に行けば行くほど見づらくなるのだ。日頃からほとんど後楽園にしか行かないから、ついうっかり『2階でいいか…』などとのんきなことを考えていた一瞬前の自分にあきれながら、隣の窓口で1階席のチケットを購入。7000円。ボクにしては高額だけど、今日はこれぐらいは使う覚悟だったのでよし。
場内でこの興行のみの特別パンフを購入。これは2000円。早くも散財だが…グッズ買うわけでもないし、まぁいいか。だいたい「AHIIせんべい」だの「激辛AHIIカレー」だのってハバネロな食い物なんか、この胃が受け付けるはずがないじゃないか!
席はいわゆる枡席。隣がメタボリックな4人桝だったのに対して、ボクの桝には背広を着たサラリーマンさんが一人。よっしゃ、これはラッキー!…だけど、エンドレスで流れ続けるサンリオのCMはなんとかならんのかなぁ。仕方ないんだろうけど。

そのサンリオとの提携で生まれた新キャラクター、AHII。そのあまりにも弱々しい外見と華麗な飛び技のギャップ、20日の後楽園大会http://d.hatena.ne.jp/pon-taro/20060821#p1でのお披露目はまだ記憶に新しい…のは、この12000人のうちの1500人くらいなんだよな。
ダンサーのお姉ちゃん二人を従え、陽気なラテンミュージックに乗せてゴキゲンなダンスを披露だぜ!
あ、みんなあっけにとられてる。そりゃそうだよな…
試合ではトップロープの上での619など超絶美技で観衆を魅了したものの、敵役のブードゥーマスクにまったくキャラがないこともあってかどうにも印象が薄い。ま、一日で後楽園6回ぶんのお客さんに観てもらえたってことで、名実ともに今日がデビュー戦ですな。
あんまり長持ちしそうにないんだが、スポンサー絡みでもあることだし、まだ何か仕掛けがあるんだろう。個人的には、間をおいてコルバタを連発するあたりがなんか闘魂列伝3っぽいなと思いました。

いつもの菊、いつもの荒谷。
土方は好きだからがんばってほしいなぁ。
AKIRAのムササビはやはり美しい。

本来はRO’Z‐ブルート一生というカードだったのだが、ブルートが右肩脱臼のため欠場。
RO’Zの必殺アラビアンプレス(ハリウッドスタープレス)は豪快そのもの。必見。
試合後、VM軍のTARUが出てきて営業…RO’Zを勧誘。おぉ、また来たかこの定番ネタ。

MAZADAはすっかりやられ役。
みのる…大技できない/受けられないのをやらない/つきあわないことにするプロレスは、いつまでもつのやら。


休憩時間にPWF会長スタン・ハンセンが来場。相変わらずの大人気。

20日後楽園以来、数度の前哨戦を経てついに両雄激突。今日のテーマは「正々堂々」と言う近藤は、セコンド無しで試合に臨む。
切り返しに次ぐ切り返しに場内のお客さんの目がついていかないほどのめまぐるしい攻防が展開され、両者がもつれ倒れる度、ビジョンでその姿を確認してはどよめく観客席。おぉ、ビッグマッチって感じがするぞ。
カズはこの試合、かなりヤバい角度の垂直落下式WA4を連発するが、近藤も全日マットでは滅多に見せないランサルセやムーンサルトを繰り出し、キングコングラリアットでカズを振り切った。

世が世なら全米PPVもありうべき世紀の一戦。今日はこの試合を観に来たという人もかなり多かったんじゃないかな。
ゴングからしばらくの間は、2匹の妖魔が互いの間合いをはかる時間が続く。リング内、外、さらにはリング下まで、心理戦が繰り広げられる。
しかし、だ。
試合が白熱すればするほど、ムタの動きはどんどんいつもの武藤の動きになっていく。
あかんなぁ。かろうじていつもと違ったのは、「大会場限定」のムーンサルトくらいだ。それじゃ、別にムタじゃなくたっていいだろって思う…それでも大多数のお客さんは大感激してるからあまり文句はいいたくないが、正直俺自身はがっかりしたなぁ…
TAJIRIの奇怪な動きはよかった。試合後入場口に消えたムタをコーナートップから視線で追う姿とかはシビれたね。

先ほどの試合の余韻が個人的に悪く響いて、まるで気が乗らないままに試合開始。
序盤の攻防からケアが川田のヒザに狙いを絞り、ニークラッシャーを連発。
ダメだ。いったん気をとりなおそう。この時点で20時間以上起きてるしなぁ。
会場外でコーヒーを飲みながら一服。思った通り、中からはあまり歓声も聞こえてこない。
場内に戻ると、ケアがまたニークラッシャーの体勢だった。よし、そろそろ試合も動くべな。
と、思っていると川田が垂直落下式ブレーンバスター!そしてストレッチプラム!中座のタイミング完璧(笑)!
それからは川田がエグいバックドロップやラリアットで攻めれば、ケアも波乗りスープレックスを返していく一進一退の展開。ケアが押され気味になると川田はとどめのパワーボム!しかしケアはここを踏ん張り、強烈なパワーボムをお返しに叩きつけ、三冠を防衛してみせた。
川田がケアに「王道というのは馬場さんのものだ。お前は、お前なりの王道をこのリングで示してみろ」と語りかけると、ケアも「今日はありがとう。俺が、王道だ!」とマイク。

プロレスラー初の衆議院議員にして、文部科学省副大臣。改めて考えるととんでもない肩書きを持つプロレスラー、馳浩がついに引退を迎える。交友のあるという(Kamipro-handの山口日昇インタビューによると『合コンで知り合った』らしい・笑)チアリーダーの先導で入場した馳。リングサイドには馳の所属する派閥のボス、森喜朗元総理が駆けつけた。しかし…
リング上、YASSHIがマイクを持つ。
「おい!リングサイドに、悪い顔した奴がおるぞ!森か!悪そうな奴っちゃ。腹の中にも黒いモンありそうじゃの!いいか、お前らがちゃんとせぇへんから、ワシら若いモンがこんなふうに悪く育ってまうんや!どうや、わかったか!」
うひゃー、スゲェ!某氏の「○○○は△△△です!」以来の大問題発言じゃないか?!
「おいYASSHI!」馳だ!
「お前のようなやつでも立派に育ったのは、学校の先生のおかげだろう?少しは文部科学省に感謝しろ!」技あり。
「今日は、お前の大好きな男を用意したぞ。ケンスケ!」合わせて一本!
馳の声とともに「Take the Dream」が鳴り響き、佐々木健介が登場!最近、この人はあまりにもおいしすぎる気がする!


たじろいだVM軍はゴングを待たずに急襲、場外乱闘に持ち込むが、首謀格のTARUはよりによって森氏の目の前で馳に捕獲される。羽交い締めにされたTARUを前にした元首相に場内から「森!森!森!」コールが降り注ぎ、調子に乗った森氏がパイプイスを持つが…これはさすがに周囲が慌てて制止。おっさん楽しみすぎだ(笑)。


ここで突然回想シーンに入る。
ボクが小学生のころ、ワールドプロレスリングで楽しみにしていたのは、ビッグバン・ベイダーと馳だった。
日本マットに登場した直後だったベイダーは毎週画面に姿を現していたが、馳は月イチかそこらだったように思う。馳の試合が放送されないままに放送時間が終了に近づくと、弟と二人で顔を見合わせていたものだった。
月日は流れ、ボクがプロレスと言えば橋本‐小川くらいしか観なくなっていた間に、パワーウォリアーは消え、武藤はハげ、蝶野は黒くなり、ベイダーも馳も新日本を離れていた。

ホーストがまだ痩せていてバンナの身体もまだ今よりは小さく、桜庭がヘンゾの肘を折ったり永田さんが亀になったりしていた頃、ボクが再びTVを通して観るようになったリングは、場外乱闘も3カウントもない「格闘技」のリング。もちろん、その画面の中に馳の姿があるはずもなかった。
その頃から数えてもすでに5年以上の月日が経つ。
ボクが、最後に馳のプロレスをTVで観たのは、もう15年も20年も前になるのか…もはや、はっきりと思い出すこともできない。


だけど、馳の最後のプロレスを、ボクは観ることができた。
インディアンデスロックに鎌固めを極める馳の姿は、15年以上前と全く変わりないように見えた。
予告されていたジャイアントスイングに合わせて、声を枯らしながら45回転をカウントした。
馳が自らスカウトした諏訪魔とのスープレックス合戦。諏訪魔のバックドロップに対抗して見せてくれたのは、ボクが大好きだった裏投げだった。


白熱した攻防の中、小島が諏訪魔のアンクルホールドに捕まった。援護に駆けつけたのはケンスケだった。馳も加わり、諏訪魔にWラリアットTARUには合体ハイジャックネックブリーカーをくらわせた。
ケンスケの檄に応えるかのように、馳がYASSHIに最後の技、ノーザンライトボムを炸裂させた。
レフリーとケンスケがマットを叩くのに合わせて、ボクらも3カウントを数えた。馳の試合が、終わった。
試合終了後、負けて去るVM軍に向けて
「困ったときはいつでも、教育しなおしてやる!鍛え直してきたらいつでもかかってこい!ま、俺は今日で辞めるけどな」
と、馳は人の悪いマイクを飛ばした。


ボクが今のようにプロレスが好きになったのはごく最近なので、古くからプロレスを観ている方に混じってこんなことを書くのは恥ずかしいんですが…
正直、この試合を観るまで、子供のころに馳の試合を毎週楽しみにして(は少なくない確率でガッカリして*1)いたことなど、忘れてたんですよね。
でも、馳さんは試合を通してその頃の気持ちを思い出させてくれました。
それだけのコンディションを整えて試合に臨んでくれたことを、本当に感謝したい思いです。ありがとうございました。


武藤、ケンスケ、小島ら選手たちがリングを取り囲む中、馳の引退セレモニーが始まる。
会場がどよめいたのは、馳の海外時代にレスリングを師事したミスター・ヒト氏が呼び込まれた時。
そして、恭子夫人と娘さんからも花束を受け取った馳は、10カウントのゴングを気持ちよさそうに聞いていた。
内閣総理大臣になって、SPを連れてリングに戻ってきます!」
と、馳副大臣は最後にそう言った。
僕は、その日を楽しみに待とうと思う。


おしまいに。
和やかな中にも厳粛に執り行われたセレモニー中に、ふざけてチョップをかますふりを見せた某元総理氏。
「人相が悪い」という事実を指摘した悪役レスラーに抗議するなら、俺らに対しても、あの場での悪ノリを詫びてもらいたいぞ。話はまずそれからだ(笑)。


おしまい。

*1:前述のように試合が放送されないことも多かったから。