DDTビアガーデンプロレス・ベルトハンター×ハンターDAY(その3)。

  • 第四試合・メインイベント30分一本勝負「高梨将弘vsヤス・ウラノ

「限界」という言葉の意味が喪失したこれまでの流れを受けて、メインには、一転して特に事前の前フリも何もない、一見普通のシングルマッチがラインナップ。
両者の経歴も、高梨が格闘技団体と勘違いして入団した闘龍門というプロレス団体をドロップアウトしてから、放浪の末にDDTに定着したのに対し、ウラノは先日TAKAみちのく率いる千葉の雄・K‐DOJOを離脱してからDDTに参戦中、と、これまた特に接点はない。どんな試合になるのか、予想できた観客は、いなかったと思う。


試合開始、両者ともにグラウンドレスリングにこだわる。腕、首、脚、クルクルと攻守が替わりながら、互いに執拗に相手の関節を狙いあう展開に。
最初にターゲットを絞ったのは高梨だったか、ウラノの脚をとらえ、レッグロックにアンクルホールド、膝十字と攻めたてる。
ウラノはこれらの攻撃をいなすようにかわし、高梨よりやや力任せのレッグロック、脚の取り合いになるかと思われたが、隙をついて高梨の首をとると、ガッチリとフロントネックロックに移行。もがく高梨だが、ウラノはトレードマークのヘラヘラ笑いのまま、首は離さず長時間絞めあげる。
なんとか首を抜いた高梨は、脚をからめてウラノをふりほどこうとする。しかしウラノもそれを許さず、両者は脚をからめたまま倒立。不安定な姿勢のまま、顔面への張り手の応酬。
その体勢が崩れると、ウラノは高梨のバックに回ってチョークスリーパー。高梨がこれを離脱したあたりで10分経過。


今日の流れに沿った、「笑いどころ満載のネタ試合」を期待していた観衆が、すっかり静まりかえった、どシリアスな前半戦。まずは、フリーになって間もないウラノのファンから、声援があがり始めていた。


ブレーク後も力比べからグラウンドへ。まず高梨がレッグロックエスケープされるとリング中央へ引き戻しながらアキレス腱固め。さらに、ヒザ固めに移行。
立ち上がった高梨はストンピングから低空ドロップキック、ここから四の字固めにいこうとするがウラノがブロックに成功する。高梨はロープに走るが、返ってきたところをウラノに捕まり、カウンターで担がれて顔面から叩き落とされるフラップジャックという技を食らう。
反撃の糸口をつかんだウラノはネックロック、高梨に逃げられるとパイルドライバー。高梨の脚攻め、ウラノの首攻めが火花を散らす。
ここでいったんウラノは高梨を場外に連れ出し、エルボー連打から鉄柱攻撃。リングに戻し、フェースロック、バックドロップから再びフロントネックロックに。さらにその体勢のまま持ち上げ、例によってヘラヘラ笑いながら強烈に絞めあげる。
なんとかロープに逃れた高梨だったが、ウラノは逆水平から張り手、攻め疲れたところに大技に打撃と畳み込まれた高梨がフラフラになったところで、試合時間は20分が経過。


試合の最初は戸惑い気味だった観客も、この時点では高梨側とウラノ側に分かれて大声援。第三試合までのノリが嘘のような、皆が固唾を飲みつつ行く末を見守る、熱戦となっていた。
だが、俺とmasaki君は、「まだまだ時間かかりそうだし、これは時間切れ引き分けになるのかなぁ」と話していた。制限時間は30分、つまり試合時間はあと10分。ヤス・ウラノが全体的に余裕をもって試合を進めてはいるが、まだどちらも決定的な勝機を見いだせているわけでは、ない。
そういえば、このときは場内の時計がわりと近くにあったのでチラチラと時間を確認してたんだけど、この試合ではほとんどジャストタイムでコールされてた。そんなとこをわざわざいじることはないだけなのかもしれないけど、本当にほぼジャストだったからちょっと驚いたな。


残り時間10分、足元のおぼつかない高梨に、ウラノはさらなるダメージを与えるべくロープへ飛ぶ。そこへ高梨がカウンターでトラースキックを当てるが、ウラノの勢いは止まらず、うるさい高梨をコブラクラッチで捕獲。
さすがに力でふりほどくことはできない高梨は、ロープエスケープ。しかし立ち上がることはできず、それを見たウラノは再度ロープへ走る。が、高梨はそのタイミングで今度は低空ドロップキック!序盤から攻められ続けたヒザへの強烈な一撃に、ウラノはたまらずダウン。高梨も続けざまの攻撃には至らず、両者ダウンに。
立ち上がった二人は、エルボー、そして張り手の打ち合い。高梨のほうがダメージの影響は大きそうだが、ウラノにヘラヘラ笑われながら挑発されると、渾身の一撃を見舞ってヒザをつかせてから、ロープに飛んでイナヅマレッグラリアット。押さえ込むがカウントは2。高梨はウラノを高々と抱え上げ、マンハッタンドロップの要領でヒザをマットに叩きつけ(!)足四の字へ。
ロープへ逃れたウラノが立ち上がれないのを見て、高梨はコーナーへ。しかしこれはウラノの罠。コーナー上の高梨に向けて駆け上ると、やや軸がずれたせいで、かえってジャックハマー気味に危険な角度で決まった雪崩式ブレーンバスター!大ダメージの高梨を抱え上げると、ウラノはさらにツームストン・パイルドライバー!
ウラノのフォールを高梨は2で返す。しかしウラノはこの機を逃さずネックロックから持ち上げてフェースバスター、ここからのカバーも、高梨はなんとかカウント2で肩を上げる。
朦朧とする高梨に、今度はウラノがコーナーに上がり後頭部へのミサイルキック!カバーに入るが高梨はまだカウント3を許さない。ウラノはコブラクラッチに最後の狙いを絞り、いったん捕獲してからリリース、顔面へのドロップキック!これでも高梨にフォールを返されると、とどめとばかりにコブラクラッチ
集中攻撃された首を固められながら、高梨はその体勢を移動させてラ・マヒストラルに!カウントは2。
しかし高梨は執拗にまとわりついてスモール・パッケージ・ホールド、これもカウント2。
さらにもう一度スモール・パッケージ、しかしやはりカウントは2。
立ち上がり背を向けて前傾になったウラノの姿勢を見て、高梨は必殺タカタニック!高速で相手の身体を一回転させて叩きつけるこの技で、ついに高梨がこの大激戦を制した!


試合時間は29分30秒。制限時間ギリギリで勝利するも、高梨は立ち上がることすらできない。ウラノは、何のコメントもアクションも見せず、足早にバックステージへと消えた…。


いやー、いい試合だった!
最終盤、雪崩式ブレーンバスターからツームストンが連発されたときは、これで試合は決まったと思ったが…まさかまさか、丸め込みからタカタニック。自分がDDTで高梨の大一番を見たのも久しぶりだし、そこでここまで完璧なタカタニックが決まったのなんか、それこそ初めて見た。
一点集中のねちっこいグラウンド戦、終始ヘラヘラしっぱなしのウラノにやたら力みかえる高梨。この二人がシングルとなったらこういう試合にしかならないんじゃないか、という想像どおりの内容で、しかしその実質は、想像を遙かに凌駕する熱戦になった。


ネタ満載のセミ以下のカードを受けて、最後はプロレスらしすぎるくらいのプロレスで締める。大枠はある意味でマッスルの常套手段のような体裁ながら、あくまで坂井&ディーノ&高梨というベルトハンター×ハンターのカラーが、試合前こそはっきりとは見えなかったが、終わってみればこの3人のやってきたこと、これからやりたいことに向かってまっすぐな興行となった…のかな。
このメインが決着した瞬間、ネタも何もない単なるプロレスの3カウントで、会場は、それまでのわかりやすいお笑い試合と同等の大歓声に包まれた。高梨とウラノの二人は、たった二人でそれだけの空間を作り上げたのだ。
本当に、いい試合だったと思う。ありがとう、高梨、ウラノ!

  • 全試合終了後「選手プロデュース興行まとめ」

メインの試合を会場の隅で観戦していたディーノが、号泣しながら坂井と共にリングへ。

「メインをどうしよう、というのは、高梨君のシングルだ、と坂井とも一致していました。アタシがビアガーデンに初参戦した5年前、高梨君は闘龍門ドロップアウトしたばかりで、デビューもしてなくて…でも、5年間で、こんなに立派にメインを務めるレスラーになりました!高梨君、よかったよ」

場内拍手&歓声。

「ここで締め…ということですが、アタシはズルいので、今年の選手プロデュース興行を振り返りたいと思います。みんな頑張ったけど、今年のミスター・ビアガーデンは中澤マイケル君!」

拍手&歓声の中、マイケルが尻を押さえながらリングに。

ケニー・オメガも来て。アンタは31日の後楽園までだけど、いつでも戻ってきてね。アンタはもうDDTのファミリーよ!」

もちろん拍手&歓声。

「各曜日のプロデューサーも上がってください。月曜日のHARASHIMA、火曜はMIKAMIさんがいないけど鳥羽さん、水曜の飯伏、木曜のKUDOとウラノ…ウラノ、出て来られる?」

沸き起こる「ウラノ」コールの中、ヤス・ウラノも姿を現す。

「では、今年のベストプロデューサーを発表します。それは、高木三四郎です!」

高木大社長が、上半身裸であわててリングに上がる。

「アタシたちは、この高木三四郎のもとに集まった、ドラマティック・ドリーム・チーム。MIKAMIさんいないけど、みんなで乾杯しましょう!」

観客は一斉に「DDT」コール。大社長がマイクを持つ。

「ビアガーデンはまだ2日あるんだけど…まあ、選手プロデュース興行は今日が最終日ということで。中締めですか。プロデューサーのみんな、お疲れさまでした。そして観に来てくれたお客さん、本当にありがとうございました!乾杯!」

ここぞとばかりに飲みまくる選手、客。やがてリング上では大社長を中心に円陣が組まれ、観客はその輪に向かって「DDT」コールを送り続けた。まさに感動のフィナーレである!
その円陣に、基本的にはDDTとは関係のない某大日本プロレスの某伊東竜二選手の姿があった。ついつい「みんな来て!」と呼ばれたせいでリングに上がってしまい、
「いや、オレはいいでしょ?オレもやるの?」
と最後まで困惑しながら、なんか勢いみたいなのに負けて無理矢理輪の中に…某伊東さん、今度、某大日本にも行きますからね…


火に油をそそぐように、新藤リングアナが

「本日の興行はこれで終了となりますが、フードは売り切れていますが、ドリンクは今しばらく販売しております!」

とコール。
集合の時点ですでに顔を真っ赤にしたHARASHIMAを捕まえた大社長が、南側客席で連続イッキ。しかしHARASHIMAはもう飲みきれず、周りじゅうから「え〜っ?!」と容赦のない落胆の声が。
それでもHARASHIMAは「きたえているからら〜っ!」と無理矢理飲み続け、観客たちはさらに「脱げ!脱げ!」コール。さすがに脱ぐのは上半身だけに留めたHARASHIMAだったが、たまたま通りがかった(?)中澤マイケルが代わりに(?)全裸になった、らしい。西側奥からはよく見えず…。


しかしその代わり!
会場自体の撤去時間が迫ってしまったため、バックステージに戻っていた大社長が慌てて花道から登場。
全裸で。

「これ以上は無理です!今後のこの会場でのプロレス開催のため、撤収にご協力ください!」

と、マイクで観客&一部選手に呼びかけた。
辛うじて灰皿で局部だけを隠したまま、全裸で。


この時間まで西側客席に陣取っていたため、至近距離から見ていた我々の目にうつったのは、「闘うビアガーデン2008」最後の特別メニュー、「社長特製おいなりさん(片方)」であった…。


終わります。終わり。